toggle
2016-01-03

石工道具の説明と制作工程の解説1

多くの方々から、「どのような道具で石を彫っているのですか?」「どのような方法で作品を制作しているのですか?」という質問をいただくのですが、HP上で画像を交えながら解説していこうと思います。

 

石材を加工する方法は、現在では機械工具を含め様々な道具工具類がありますが、私の場合は大型の作品も小型の作品も、主に上画像のような昔ながらの形状の道具類で、昔ながらの手作業の方法で制作しています。上画像で見られる道具類は、石材加工に携わる石工[いしく]職人によって使用されてきた、ごく一般的な形状のものです。名称を表記しますと、 ①端切リ[たんぎり] ②ハツリノミ ③ムシリノミ ④⑤字堀ノミ[じぼりのみ] ⑥⑦⑧平刃ノミ[ひらばのみ] ⑨⑩⑪石頭[せっとう] ⑫コヤスケ ⑬ビシャン ⑭刃トンボ[はとんぼ] となります。今回の<石工道具の説明と制作工程の解説1~3>は、上画像の各道具に表記された番号と照らし合わせて進行していきます。

 

ノミ類②③④⑤⑥⑦⑧の尖端、刃[は]の部分は、用途に合わせてそれぞれ形状が異なります。②③④⑤のノミは、尖った刃先を石に刺し込み、石の表面を剥がしながら彫り進むために適した形状になっています。大きく石の表面を剥がす場合は刃先は広く大きく、細かい箇所を少しずつ彫り進む場合は刃先が細く小さくなります。⑥⑦⑧の薄く平らな刃のノミは、石の表面を平たくならすのに適した形状になっています。私の使用するノミ類の太さは、①②は8分[はちぶ]、③は6分[ろくぶ]、④⑥は4分[よんぶ]、⑤⑦⑧は3分[さんぶ]、ノミ類の長さは私の場合はすべて6寸[ろくすん]で揃えてあります。ちなみに1分[いちぶ]は約3.3mm、1寸[いっすん]は約3.3cmです。⑨⑩⑪の石頭[せっとう]は、私は⑨大石頭[だいせっとう]1.1Kg、⑩中石頭[ちゅうせっとう]0.8Kg、⑪小石頭[しょうせっとう]0.6Kg、の重さの物を使用しています。このハンマーでノミの刃の反対側、頭の部分を打撃して石を彫っていきます。太いノミで石の表面を大きく剥がして彫り進みたい場合は重い大石頭を、細いノミで繊細に彫り進みたい場合は軽い小石頭を、というふうに石頭の重さで打撃力を調節して作品を制作していきます。⑫のコヤスケは石を大きく割り剥がすために、⑬のビシャンはノミ作業後の粗い石の表面をならすために、⑭の刃トンボ[はとんぼ]はビシャン作業後さらに平たく石の表面をならすために使用します。

②③④⑤⑥⑦⑧⑫⑬⑭の道具の尖端はどれも灰色ですが、この部分はタンガロイと言われる超硬合金(タングステン・カーバイト)の材質でできています。現代の石材加工用の道具工具類は、この鋼鉄よりも硬度の高い超硬合金チップが刃先に埋め込まれていることによって、鋼鉄の道具類だけであった時代よりも石材の加工がかなり楽になりました。とはいえ硬い石材が相手ですので、制作中超硬合金の刃先も徐々にあまくなり切れ味がなくなってきます。その場合は卓上グラインダーで刃先を削り、切れ味が良くなるように研ぎ直して使用します。

では、上画像作品の制作を通して、私の普段使っている石材加工道具の使用方法と、作品制作工程の解説をしていこうと思います。ちなみにこの作品は、白、黒、赤の三種類の御影石[みかげいし]で制作されていて、雪山、火山、絶壁という風景の形状が石の上面に彫られています。

まず不必要な部分を取り除くための荒取り作業から始めます。⑫コヤスケの厚みのある平らな刃[は]を石にあて、⑨大石頭[だいせっとう]で強く叩いて石を大きく割り剥がします。手持ちの道具の中では一番大きな石の破片、木っ端[こっぱ]が発生します。

コヤスケでは石が大きく取れ過ぎてしまう可能性があるので、その場合は①端切リ[たんぎり]を使用します。端切リを石にけがいた線すれすれに置いて、慎重に割り剥がしていきます。平らな刃がコヤスケよりも小さいので、石の剥がれる量も少なくなります。

ヤスケと端切リでは取りきれなかった石のこぶは、②ハツリノミを使って取り除きます。ノミの頭を大石頭でしっかり叩き、刃先を石に1.5cm程の深さに埋め込みながら前に彫り進み、不要な部分を剥がしていきます。そのときに上画像のような線彫り痕が石に残ります(線彫りの間隔は2~3cmくらいのときが、一番効率良く石を剥がしていけます)。上から、横から、ひっくり返して下からと、望んでいる形状に近付くまで線彫り作業を繰り返します。ちなみに刃先を深く埋め込みすぎるとノミが折れるので注意が必要です。

-石工道具の説明と制作工程の解説2に続く-

関連記事